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《 ・・・ 「落第しちゃうわよ、オリバー」 ぼくらは日曜の昼さがり、 ぼくの部屋でお互いに坐りながら本を読んでいた。 「オリバーったら、 そこに坐ってあたしの勉強ばかり見てたら、 あなた落第しちゃうわよ」 「きみの勉強なんか、見ちゃいないよ。 ぼくは勉強してんだ」 「ウソつきね、あなたって。 あたしの足ばかり見てるくせに」 「ほんのたまにじゃないか。 一章読んだら、ちらっとだよ」 「まあ、ずいぶん章の短い本だこと」 「うぬぼれの強い女だなァ。 それほどの足でもないだろう！」 「わかってるわよ。 でも、あなたはいい足だと思ってんだから、 どうしようもないでしょ？」 ぼくは本を投げすて、彼女の坐っているそばへ行った。 「ジェニー、お願いだ。 死ぬほど愛してるっていうのに、 ジョン・スチュアート・ミルなんか 読めるわけないだろう？」 彼女は顔をしかめ、イヤだという表情を示した。 「ああ、オリバー。そんなこと、お願いだから ･････ 」 （・・・） すべてがいちどきに起こった。すべてのことが。 ・・・ 》 ～ 「ラブ・ストーリー」エリック・シーガル （trans. ITAKURA Akira） ● John Stuart Mill ： イギリスの哲学者、社会思想家、経済学者。 James Mill の長男。 幼時から天才教育を受け哲学、経済、政治、婦人問題、 宗教、社会主義などに幅広い著作活動を展開した。 イギリス経験論の上に立つ帰納法を完成し、 オーギュスト＝コントに同調して、 実証的・科学的な社会科学理論の基礎を確立。 英国の社会主義理論の父となった。 一方、自由主義経済学の最後の代表者の位置を保った。 主著 「論理学大系」「経済学原理」 「自由論」「功利論」「自伝」 （一八〇六～七三） ◆ Auguste Comte ： フランスの哲学者。社会学の創始者。 フランス革命後の市民社会の危機を、科学を通じ、 人間知性の改革によって再建することを主張。 人類の知識の発展を 神学的・形而上学的・実証的の三段階に分け、 最後の段階において、 真の予見可能な科学的知識を獲得できるとした。 晩年宗教的傾向を帯び、「人類教」を唱えた。 著 「実証哲学講義」など。 （一七九八～一八五七） †Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) Shogakukan 1988 ■ stretch one's legs ： （特に長く座っていたあとで）散歩する , 脚を伸ばす , 軽い運動をする. †Progressive English-Japanese Dictionary, Third edition Shogakukan 1980,1987,1998 PR |
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